親子の心の架け橋

思春期の子どもの感情の不安定さ:脳の発達とホルモンの影響から理解する親の関わり方

Tags: 思春期, 感情, 脳の発達, ホルモン, 親子のコミュニケーション, 子育て

思春期は、子どもたちが身体的にも精神的にも大きく変化する時期です。この時期に特有の、感情の大きな波や不安定さに直面し、戸惑う親御さんも少なくないことでしょう。昨日まで上機嫌だったのに、些細なことで急に不機嫌になったり、激しい感情表現を見せたりすることは、多くの思春期の子どもに見られる現象です。このような感情の揺れ動きは、単なる「わがまま」や「反抗」として片付けられるものではなく、この時期の子どもたちの内面で起きている複雑な変化に起因しています。

思春期の感情の不安定さの背景:脳の発達とホルモンの影響

思春期の感情の不安定さを理解するためには、この時期に起きている脳の発達とホルモンの変化について知ることが重要です。

1. 脳の発達:前頭前野の未熟さと感情を司る部位の活性化

人間の脳は、誕生から成人期にかけて段階的に発達していきます。特に、理性的な判断や感情のコントロール、衝動の抑制などを司る「前頭前野」は、思春期にかけても発達が続きますが、成熟するのは20代前半とも言われています。

一方、感情や情動反応を司る「扁桃体(へんとうたい)」や快感・報酬系に関わる部位は、思春期早期に急速に発達し、活性化することが知られています。この、感情を司る部位の活性化と、それを抑制・調整する前頭前野の発達が追いついていない時期的なアンバランスが、思春期特有の感情の不安定さや衝動的な行動の一因と考えられています。

例えば、強い喜びや怒り、悲しみといった感情が生じた際に、それを客観的に評価したり、表現を調整したりする脳の機能がまだ十分に発達していないため、感情がダイレクトに行動に結びつきやすく、大人の目には「激しい」「予測不可能」に見えることがあるのです。

2. ホルモンの影響:性ホルモンなどの急激な変化

思春期には、性ホルモン(エストロゲン、テストステロンなど)の分泌が急激に増加します。これらのホルモンは、第二次性徴といった身体的な変化を引き起こすだけでなく、脳の神経伝達物質のバランスにも影響を与え、気分や感情の変動に関わることが研究で示されています。

ホルモンの影響は個人差が大きく、また、一日のうちでも変動することがあります。これが、特定の理由がないように見えるのに、気分が大きく揺れ動くことの一因となる可能性があります。

このように、思春期の感情の不安定さは、脳の構造的な変化とホルモンの生理的な変化という、子ども自身の意思ではどうすることもできない要因に大きく影響されていることを、親はまず理解する必要があります。

親が知っておくべき基本的な姿勢

思春期の子どもの感情の波に直面した際、親がパニックになったり、感情的に反応したりするのではなく、冷静に対応するためにはいくつかの基本的な姿勢が役立ちます。

具体的な親の関わり方

では、思春期の子どもの感情の波に対し、具体的にどのように関われば良いのでしょうか。

思春期の子どもの感情の不安定さへの対応は、親にとって根気と柔軟さが求められる課題です。子ども自身もまた、自身の内面で起きる変化に戸惑い、葛藤しています。親がその背景にある科学的な事実を理解し、寄り添う姿勢を示すことで、子どもは自己理解を深め、困難な時期を乗り越える力を育んでいくでしょう。この時期、親自身が孤立せず、他の経験豊富な親御さんや専門家と情報を共有し、支え合うこともまた、非常に重要なことと言えます。